山陰道路 三隅・益田間開通イベント参加
今回は山陰道路 三隅・益田間開通イベントをチャリで参加してきました。
今回はハードボイルド調でお届けします。
~山陰道開通記念・風の軌跡~
3月8日。風はひどく冷たかった。だが、空はどこまでも容赦なく晴れ渡っていた。
俺たちを待っていたのは、まだ誰も踏み入れていない真新しいアスファルトだった。山陰道、三隅・益田間。その開通を祝う場に、俺たちは自転車で乗り込んだ。
集まったのは俺、白上憲和。そして長野先生、山根先生の3人だ。島根県歯科医師会自転車競技部。とうに若さを通り過ぎた、いいおっさん三人組である。久しぶりに集った男たちに、気の利いた言葉など必要なかった。ただ黙ってペダルに足を乗せる。それが俺たちの流儀だ。
「山根先生、どうだ乗ってるか?」沈黙を破るように一番年若い山根先生に問うた。
「イヤー、全然ですよ!今日は皆さんについていけるか心配です。」
(ふ、まるで試験前の高校生のような答えだ)と心の中で笑う。
片や長野先生は冷静だ。静かにスタートの刻を待っているようだった。不断のたゆまざる鍛錬からくるの自信なのだろう。
今回、山根先生だけが、俺たちで作ったチームのオリジナル・サイクリングジャージを律儀に身に纏っていた。サドルに跨りペダルを踏み込むその尻には、当会のシンボルキャラクター「ハッピーおろち君」がプリントされていた。風を切って躍動するおろち君は、どういうわけかひどくセクシーだった。俺たちは少しだけ笑い、そしてヘルメットの顎紐を締めた。
走り出す。引き立ての白線が、冬の終わりの太陽を反射して眩しい。 高速道路という特権だろう。普段よりもやや高い視座から見晴らす景色は、たまらなく新鮮だった。眼下には荒々しくも美しい日本海が広がり、遠くには三隅の発電所が静かに横たわっている。
冷たい風を切り裂きながらクランクを回す。28キロの道のりを進みながら、俺の胸に去来したのは奇妙な感慨だった。明日からここは、鉄の塊たちが猛スピードで駆け抜けるだけの道になる。俺たちがこの空に近い道を、自らの息を弾ませ、自転車で走れるのは、これが最初で最後なのだ。二度と走ることのできない幻の道を、タイヤがしっかりと掴む感触。それだけが、確かな現実としてそこにあった。
俺たちの背中を追うように、ランナーやウォーカーたちが次々と新しい道に足跡を刻んでいった。走り終えた道の側の会場には出店が立ち並び、喧騒と美味そうな匂いが入り交じっていた。
祭りの熱気の中で、いいおっさん三人は心地よい疲労感と喉の渇きを噛み締めていた。自転車というやつの良さを、骨の髄まで再確認した一日だった。
30キロ弱、自転車乗りには物足りない距離だが、今シーズンの闘いに向けてはいいプロローグだ。
「次回は、佐々木先生、近藤先生も入れて益田のINAKAライド160キロですね!」と会場を立ち去ろうとする二人の背中に言葉を投げつけた。
「いや~無理、無理。」と頭を振る二人だが、まんざらでもなさそうである。
これからも自転車競技部の活動は続けていく。俺たちの前に道がある限り、ペダルを回し続けるつもりだ。

